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2012/1/31
吉松 隆さんと大河ドラマ「平清盛」の話
新年から始まった大河ドラマ「平清盛」の音楽は吉松さんで、本編や予告編、紀行の音楽は僕が指揮してる(オケは東京フィル)。僕はデヴュー当時から吉松さんを積極的に取り上げてきたので、出会った頃を思うと大河で共演できるようになって本当に嬉しい。
「平清盛」の音楽は大河始まって以来の大編成だそうで(吉松さんらしい・・!)、指揮してても楽しかった。(「タルカス」は昨年発売したCDの音源ではなく、新たに録音した音源です)。
僕が吉松さんを初めて知ったのは1990年にイギリスに留学した年の冬だった。日本から持ってきてた日本の現代音楽集のCDの中に吉松さんの「朱鷺によせる哀歌」が入っていて、それを初めて聴いたときその美しさに思わず涙した・・・。
1993年にロンドンのプロムスにデヴューしたときイギリス大手のCD会社CHANDOSの社長さんが何でも好きなCDを作ってくれると約束してくれて、僕は迷わず吉松さんを選んだ。このときイギリスでは吉松さんは無名だったし、周りから「悲愴」か「春の祭典」の方が良いと散々言われたけど僕は絶対YOSHIMATSUと言い張った。
このときははまだ吉松さんが偶然にも僕の高校、大学の慶応の先輩だと知らなかったし、僕の大好きなシベリウスが吉松さんにとって神様のような存在だとも知らなかった。
国際電話で初めて吉松さんと話をしたとき、吉松さんはただの留学生がイギリスで学生オケかなんかでカセットに録音する程度と思ってたらしく「出来たら送ってね」とそっけなかったが後日マネージャーさんがちゃんと説明してくれて、録音の時にはマンチェスターに来てくれた。オケは僕が副指揮者をしていたBBCフィルで交響曲2番、ギター協奏曲、「朱鷺によせる哀歌」を録音した。このときは2人とも海外の一流レーヴェルに録音できてそれだけで嬉しかった。
セッションが無事終わったあと、中華街の怪しい日本食のレストランで(アルバイトでウェイトレスをしてた僕のかみさんを除いて日本人が誰も働いていない)閉店まで祝杯をあげてたのをよく覚えてる。
このときの2人の会話は、「本当にできるのかなぁ」「アジアの作品全集みたいなやつの1枚だったりして」「ジャケットが大仏とかだったらどうする?」「芸者よりマシじゃない?」「富士山は絶対やだなぁ・・」みたいな会話をしてた。
もちろんちゃんとしたYOSHIMATSUのアルバムとして発売されてこれがよく売れた上に、CHANDOSの会長、社長親子が吉松さんの音楽に惚れ込んで、これまでの吉松作品とこれからの新作全てを無条件で録音する(僕の指揮で)契約を申し込んできた。
CHANDOSと契約して最初の録音が新作の交響曲3番だった。吉松さんが現代音楽の呪縛から解き放たれて、やりたい音楽を存分に書き上げた情熱の交響曲。チャイコフスキーとシベリウスと黒澤明のサムライ映画がごっちゃになったみたいな灼熱の音楽で、吉松ワールド全開。BBCフィルも燃え上がって凄いセッションとなった。
このときの吉松さんと僕のテンションは尋常じゃなかったし、物凄いエネルギーを使った。今もう一度やれと言われても絶対できない・・。吉松さんは録音が終わった後にこの交響曲を僕に献呈してくれた。この頃の吉松さんのスコアはまだ手書きで、物凄い気迫が音符から伝わってくる。
昨年発売した僕が指揮した東京フィルとの吉松作品集「タルカス」も素晴らしいけど(大ヒットしたそうです)、是非ともこの交響曲3番も聴いて欲しい・・。(4番、5番も素晴らしいです)。来年は6番も生まれるはずなので今から楽しみにしてる。
ところで関西フィルとはこれまで沢山の吉松作品を演奏してきた。吉松の演奏回数ではダントツで世界一だし、吉松さんの世界をすごくよく理解してくれてる。ところが2月の定期で取り上げる吉松さんの名作「朱鷺によせる哀歌」は意外にも初めて・・。
この頃の吉松さんは難解な現代音楽の世界で苦しんでいた。絶滅する美しい音楽と朱鷺を重ねあわされてる。イギリスでCD録音したときに、BBCフィルのプレーヤーがその美しさに目に涙を溜めていた・・・。
2月の定期で関西フィルがどんな音色をだしてくれるのか今から楽しみにしてる。
それでは皆さんコンサートでお会いしましょう!!
吉松隆:交響曲第3番/サクソフォン協奏曲
吉松さんが当時僕が黒澤映画の「七人の侍」の三船敏郎みたいだといって、僕のイメージで作曲してくれた灼熱の交響曲第3番。オケのテンションも凄いです。カップリングの協奏曲を吹くサックスの須川さんのパフォーマンスも圧倒的。これを知らなきゃ吉松ファンでもフジオカファンでもありません。
(※ヘッドフォンなどで大音量で聴かないとこのアルバムの良さはわからないそうです)
PS 実は7~8年前に「ウルトラQ」リメイク版の音楽を吉松さんが書き下ろした。それが凄い傑作で、僕の指揮で日本フィル、それにソリストのオンドマルトノの原田さんや、十二弦琴の吉村さん他凄い方たちと録音したが、映画そのものが無くなってしまい、この音源はお蔵入りしてしまってる。なんとか復活して欲しい・・・!なんてここで書いちゃっていいのかな・・・。
藤岡 幸夫
旧公式ホームページ2000/5/8付from manchester「吉松隆さんの話」はこちら
(※吉松氏が藤岡さんについて語っているページへのリンクもあります!)